母性的な中小SIer?

任天堂の岩田社長の描くビジョンは見事で、トップダウン&ロジカルな問題解決の見本である。是非リンク先をじっくりと読んで欲しい。

http://pc.watch.impress.co.jp/docs/2006/1206/kaigai324.htm

しかし、実際SI文化圏の大多数をしめる中小のSIer/開発請負会社にとって、分かりやすいビジョンを描くことは難しい。経営の中心課題が、「いかに優秀な人間を確保するか」、と「いかにおいしい仕事を取ってくるか」、に限られるからだ。部門レベルでは、「いかに要員空き稼動を作らないか」、という課題となるだろう。
優秀=生産性が高く自律的に動ける社員、を空き稼動なく動かし続けるには、社員一人ひとりの考え方や性格を簡単には無視できない。そして、人材の流動性が高い業界において、優秀な人間を会社に留め、足りない分は育てなくてはならない。あまりにはずれたビジョンを描いても、誰も付いてこれないからだ。
このような環境では、トップダウン的に白紙にビジョンを描くよりは、そこにいる人間にマッチしたビジョンを後付で描くことになる。いわばボトムアップ的であり、ある意味母性的であると思う。さらに言うなら農耕的でもある。皆に収穫物を行き渡らせ、落伍者を極力減らす戦略だ。
逆に、組織に分かりやすく納得できる経営ビジョンがある時は「俺について来い」状態となり、父性的・狩猟的な「狩の獲物は皆で山分け」戦略が取れる。
どちらが良い悪いではなくて、中小SI企業は母性的な性格になりやすくなるんじゃないか、と考えていて、だとすればそのような組織で働く人間の行動も以下のようになると思われる。

  1. 父親になろうとする。つまり、自分でビジョンを描き出し、組織から次第に距離を置きたがる。
  2. 子供のままでいようとする。つまり、モラトリアム。

ただし、母親の後を継ごうとする人は少ないだろう。母親とは組織(実際にはその組織を構成する管理職群)そのものであり、すでにたくさん存在するからだ。結果甘えた子供と、群れを巣立ちたい人達に分かれがちになってしまう。これが一体感のない、一枚岩じゃない状態だろう。
どのような組織でもこのような構図はあるだろうけど、特にぼくが所属しているような中小SIerというのは、このような構造を内包しているのだと思う。