アート・オブ・プロジェクトマネジメント

アート・オブ・プロジェクトマネジメント ―マイクロソフトで培われた実践手法 (THEORY/IN/PRACTICE)

アート・オブ・プロジェクトマネジメント ―マイクロソフトで培われた実践手法 (THEORY/IN/PRACTICE)

マイクロソフトのマネージャが培った経験と技術を、プロジェクトが開始する前から終了するまでを通じて、網羅的に解説した本。
特に読んで欲しいのは、ある程度経験を積んだリーダーやマネージャ。「ふんふん。そうだよね。」「へー、やっぱりそうなんだ」といった感じで、自分の普段の行動をチェック・改善する目的で読める。特に読んでいてあまり日米の文化の違いによるひっかかりは感じないのが良い。ユニークなのは、「社内の力関係と政治」に関して1章を割いているところ。これ以外にも、きれいごとでない相当人間臭いテーマに丁寧に踏み込んでいるのも実践的で面白い。もちろん考え方だけでなく、会議テクニックや各種管理手法など、現場で使えるスキルも説明している。
この本は「マイクロソフトで培った実践手法」と副題があるだけに、ソフトウエア開発のうち、主にプロダクト開発におけるテーマを中心にしており、日本で最も数が多い、受託開発・SIプロジェクトとは微妙に感覚がずれるところもある。そのあたりも「対象読者をある程度経験のある人」向け、とぼくが考える理由である。プロジェクトで何か困っていることがあり、即効性を求めて読む本ではない。(実際問題、本を読んでスッキリ解決するマネジメント上の問題なんか少ない)
プロジェクトの(というよりも、プロジェクトに責任を持つ自分自身の)体質を改善し、健康で好ましい状態に変えていきたい。そんな目的を持ってじっくりと読み進めて欲しい本。
印象に残った文章を13章5節「冷酷であれ」から引用。リーダーという仕事の本質であり、わかっていながら、なかなか到達できない境地。。

問題の存在を見抜くことができる聡明な人はいますが、解決策を見出そうと努力し、その解決策を実行する勇気を振り絞ろうとする人はあまりいません。というのも、あきらめる、部分的な解決策を受け入れる、問題が解消することを祈りながらずるずると引き延ばす、他者を非難するという安易な道があるためです。より大変な道は、問題に正面から取り組み、目標を満足できないような決定に対して抵抗することです。優れたプロジェクトマネージャは、簡単にあきらめたりはしないのです。プロジェクトにとって重要なことであれば、彼らはその問題に対する答を見つけたり、問題を解決するために、(必要な手段すべてを用いて)積極的に行動するのです。

以下、簡単に章立て。

  • 1章 プロジェクトマネジメントの歴史(なぜ気にかける必要があるのか)
  • I部 計画
    • 2章 スケジュールの真実
    • 3章 やるべきことを洗い出す
    • 4章 優れたビジョンを記述する
    • 5章 アイデアの源
    • 6章 アイデアを得た後にすること
  • II部 スキル
    • 7章 優れた仕様書の記述
    • 8章 優れた意思決定の行い方
    • 9章 コミュニケーションのと人間関係
    • 10章 メンバーの邪魔をしない方法:プロセス、電子メール、打ち合わせ
    • 11章 問題発生時に行うこと
  • III部 マネジメント
    • 12章 リーダーシップが信頼に基づく理由
    • 13章 ものごとを成し遂げる方法
    • 14章 中盤の戦略
    • 15章 終盤の戦略
    • 16章 社内の力関係と政治