遺伝と環境

気がつけば随分更新をサボっていました。オリンピック観戦に忙しかったのもありますが、クワガタの世話にも結構時間を取られていました。

かなり写りは悪いですが、この写真に写っている3匹は兄弟です。親子ではありません(昆虫は羽化してからはそれ以上大きくならないのです)。遺伝的には同じ因子を持つこの3匹の大きさを決める要因、それは環境です。一番大きいものは栄養価の高い菌糸瓶で育て、それ以外の二匹はより栄養価が劣る普通のマットで育ててみました。
もちろん、菌糸瓶で育てても比較的小さな個体が羽化することもあるでしょうが、今シーズンの私の結果では、安定してそれなりの大きさになりました。

「それなり」までは環境要因

クワガタの例で言えば、本当に大きい成虫が欲しければ、環境を整えるだけでなく、良い血統(遺伝子)のものを選ぶ必要はあります(何年かブリードしてみて実感しています。突然、美しい個体が出てくることはありませんね)。しかし、ある程度の大きさに育てるには、コツをつかめばそれほど難しくはありません。
これは、人間の成長についてもあてはまると感じます。誰でも環境をちゃんと整えてあげれば、ある一定レベルまでは成長することができる。もちろん、クワガタと人間の成長を同列に語ることはできませんが、才能ですべてが決まってしまうことはない、という意味では似ています。

チームが人を育てる

人が成長する上で一番大きい環境要因は周りの人間との関係でしょう。ソフトウェア開発者ならプロジェクトチームが一番身近な環境です。菌糸瓶のように栄養たっぷりのチームにいれば大きく育つし、そうでなければなかなか成長できない。
優秀でやる気のあるリーダーやメンバーが揃っていて、しかも適度にチャレンジしがいのある仕事が与えられれば、開発者は着実に成長することができます。チーム全体の「やる気度合い」はかなり重要な要素ですから、リーダーはそこを目指してメンバーを管理ではなく演出するのです。
また、アジャイルプロジェクトファシリテーションがうまく「はまる」と、プロジェクトメンバーが大きく成長するように感じるのは、これらがメンバーを演出することでチーム全体のパワーアップを目指すアプローチを採用しているからでしょう。

プロジェクトは選べないか?

しかし、私のクワガタがそうであったように、環境に投入される立場からすれば、「選べないじゃん!」という思いもあるかもしれません。昔から親と上司は選べないと言われるらしいですが、プロジェクトも同じように選べないと思っている人も多いようです。
が、僕たちはブリードされているクワガタとは違います。言われるがままに仕事をするだけではなく、自分で自分の将来は決めることができるのです。いつかは自分の望むプロジェクトに配属されます。ただそれが、明日や来週や来月ではないかもしれないだけで。

環境に影響を与える努力をする

プロジェクト環境には自分自身も含まれることを忘れてはいけません。経験が少なくても、下請けの立場であっても、自分もプロジェクトの一部なのです。つまり、影響を与えることができるのです。
オオクワガタの幼虫には、「居食い」と呼ばれる食性があります。簡単にいうと自分の糞と菌糸の含まれるオガクズを同時に食べることによりとても大きく育つことで、糞中に残る栄養素とバクテリアの作用で成長するそうです。まさに、環境と自分自身を一体化させている状態だといえるでしょう。
環境との関係を切ってしまってはいけません。ちょうど幼虫が居食いをしないと大きくなれないのと同じように、自分の仕事と周りの仕事の両方を食わないとダメなのです。そのために今、自分にどのような行動が必要か、それを問い続けてみましょう。
そしていつか幼虫が自由に動きまわれる成虫に羽化するように、あなたの次のステップが見つかるでしょう。