私が今でも現場のオペレーションをする理由

私は今は、マネージャという立場で常時6つから7つ程度の受託開発プロジェクトに責任を負っています。しかし今でも、以前現場リーダーを担当したシステムのオペレーション(運用サポート)をします。具体的には、モジュールの入れ替えや、ログの調査、SQLをたたいて本番データにパッチをあてることもします。
私の所属部署には専門の保守部隊がありますから、保守はそちらに引き継ぐのが原則です。しかし、特定の事案に関しては、極力私が対応することを意識しています。
これは単に「後継者不足」「コストをかけたくない(管理職なので残業つかない)」という理由だけでそうしてるのではありません。お客様にとって(開発を担当した)私が対応する安心感を別にすると、理由は次の2つです。

理由1:「意味のある無駄」を得るため

たまたま読んだプレジデント誌に、「意味のある無駄」のススメという記事がありました。要約すると、表面的には明らかに効率の悪い無駄とも思える仕事が、実は「潜在機能」を持っており、その効用は無駄にできない、ということです。
たとえば銀行における、小口のお金の出し入れを客先で手伝うというサービスが、実は「貸出先の経営状況を肌で感じる」という隠れた機能を持っていた。ところが昨今、コストがかかり過ぎるという理由でそのサービスを止めてしまった銀行は多く、それが結果的に銀行の与信能力を下げてしまったのではないか。ということです。
私も、客先で作業をしていると、肌感覚で、システムに対する評価や不満が分かります。障害などの明らかな問題は当然指摘されますが、「実はこの機能は使われていない」「この機能はオペミスを起こしやすい」といった「あえて指摘するまでもない」情報は、現場で感じ取るのが一番です。
客先で保守作業をする、という仕事には、こういった「潜在機能」があり、それは実は私にとっては重要なことです。この記事を読んで再認識することができました。

理由2:エンジニアとしての緊張感を保つため

もう一つ。これはいささか身勝手な理由なのですが、「私がエンジニアとしての緊張感を保つため」という理由もあります。本番環境での作業は緊張します。事前に定めた手順に従い、丁寧に作業を行う必要があります。いきなり本番環境で作業せず、一旦開発環境にてリハーサルを行う。結果は、お客様に確認していただく。といった当たり前の振る舞いをこなしつつ、いざという時にはとっさの判断で対応しなくてはいけません。
最近は営業や管理といった仕事が多いのですが、こういった「エンジニアの本分」を忘れちゃいけないな、という気持は最近強くなりつつあります。

もちろん、若手に経験させるため、こういった仕事はどんどん委譲しなくてはいけません。しかし、こういった理由から、なかなか手放せない自分もいるのです。