AgileJapan2010で得られたこと

つい先ほど、AgileJapan2010が無事終了しました。今年もたくさんの方に参加いただき、まずは一運営委員としてお礼申し上げます。ありがとうございました。
次に一参加者として感想を一言でいえば、「参加して良かった!」この一言につきます。詳しい内容については公式か他の参加者のレポートを待っていただくとして、私個人が受けた印象について書きます。

相互主観性とアクチュアリティ

まずは昨日の野中郁次郎先生のキーノート。
野中先生がずっと掲げられているテーマは知的創造性であり、大枠や触れられたエピソードについては著書『知識創造企業』などから言及されていました。しかしやはり、講演というライブな場で聞くそれは読書からの体験とは一味違いました。限られた時間で、自分の問題意識とすり合わせながら聴くからでしょうね。
私がまず印象にのこったのは「相互主観性」というキーワードです。知識を強みとする企業を作るのは、個人の信念を心理に向かって社会的に正当化していくダイナミックなプロセスであり、これらの思いを本音ベースでぶつけあい、高めあうためにリーダーシップが必要だということでした。
相互主観性とはいいかえれば自律性であり、私がチームビルディングをする上で大事にしている価値観でもありますし、アジャイルチームが目指すところでもあります。
また、実践と現場の重要性を説かれておりましたが、「現」といっても、分析的であり「モノ的」であるリアリティと、主客未分・直観的であり「コト的」である、アクチュアリティは違い、大事なのはアクチュアリティであること、という言葉も響きました。要は一緒に汗かくことが大事だよ、ということです。

チーム思考を拡張する限界

次に本日のAlanさんのキーノート。
「ポストアジャイル」というテーマで、今のアジャイルに欠けているのは構造とマネジメントである、という主張から、リーン思考についての展開でした。私にとって一番印象にのこったのは、リーンやカンバンや無駄とりの話ではなく、「チーム思考を拡張しても、(アジャイルは)企業レベルには適用できない」という、一言です。
私の得意分野はチームビルディングであり、プロジェクトチーム運営は自分の大きな成功体験です。しかし、チームではなく、もっと上位の組織運営が、どうもうまくいっていないとも感じていました。ふりかえってみると、私なりに考えた組つもりの組織運営なのですが、これは「チーム思考の拡張」であり、組織としてどうしたいか、どうあるべきか、というレベルで考えていなかったのかもしれません。
アクチュアリティを忘れず、かつ現場のチームとはまた違う観点から組織について考えてみるモチベーションがわきました。来月から来期の計画作りを開始するのですが、とても良いタイミングできっかけを得ることができたわけです。

その他
  • 県庁内でプロジェクトファシリテーションを実践されている佐賀県庁の東さんの発表が抜群に面白かったです。プレゼン能力が尋常じゃない。今度福井でも講演して欲しいくらいです。
  • 私がモデレータ担当だったカンバンゲームがとてもうまくいきました。参加いただいたみなさんのイキイキした顔がとてもよかったです。
  • 昨年(AgileJapan2009)の私の「カマスの話」を聞いて、現場で主体的に勉強会などの活動を始められた方と懇親会でお会いしました。このようなフィードバックはとてもうれしく、励みになります。
  • 野中先生はソフトウェア業界に今までノータッチだったそうですが、Scrumにおける野中論文の貢献度をアピールし、参加いただいたそうです。しまいにはノリノリになられたそうで、もしかすると平鍋さんは、ソフトウェア業界の歴史を変えるようなことをしたのかもしれないです。
  • 今回は二日間にわたりいろいろとお手伝いをできたせいか、いろんな人とお話することができました。今まで挨拶程度だった人としっかり話ができてとても良かったです。

暗黙知の重要性とか、他にも書くべきことはあるんですが、PCのバッテリが切れそうなのでこのあたりで。

プログラマのワークライフバランス

私の友人の外資系生保営業マンは、転職後わずか1、2年でトップ生保マンの証であるMDRTに選ばれるほどの優秀な奴だ。もちろん、土曜も日曜もなく営業しているし、何かあればお客様のところに駆けつけなくちゃなので、普通に考えるとしんどそうではあるけど、傍から見ていると、とても充実した仕事と生活をおくっているようにみえる。
彼は多趣味だが特に酒に対する造詣が深く、中小企業診断士と同じくらいの情熱で利き酒師の資格を取得したくらいだ。特筆したいのは、接待営業に使えそうだからといった打算で資格を取ったわけではないということ。本当に酒が好きだから取ったという。そしてもちろん、この資格は営業面にも役にたっているらしい。お酒で深まる仲というのは馬鹿に出来ない。
もちろん彼は、お酒の場だけでなく、普段から本気でお客様のライフプランについて考え、ベストな提案をしようと心がけている。そしてその心意気はお酒の場で見せる彼の生きざまによってブーストされお客様に伝わり、結果的に営業成績に結びついているのだと思う。

もう一人の友人は医療関係のソフトパッケージの営業マンだ。彼もとても優秀な営業で、お客様にとても好かれる。なぜ好かれるのか考えてみると、おそらく彼が「媚びないけども、尽くしてくれる」からだ。彼は自分の時間を使ってお客様の職場のPCを修理したり、ウイルス駆除まで行う。場合によってはプリンタをのせるラックを木材を買ってきて自作までする。お客様の病院の祭りの出店で焼き鳥を焼くことするする。でも彼は「PCや木工は自分の趣味だし楽しいから問題ない」と、平気な顔だ。
さらに、彼はこのような「業務外サービス」だけで仕事を取ろうとしているわけではない。彼は決して媚びない営業をする。泣きの営業はしない。知恵を絞ったシステム内容と価格設定により、売り手と買い手が納得した提案で勝負することに意義を感じているそうだ。

たまたま例が営業マンだったけど、私は彼ら二人とも仕事と趣味という意味でのワークライフバランスが取れた素敵な人生だと感じる。理想的なワークライフバランスとは、仕事でのいやなことをプライベートの楽しみで打ち消すことじゃなくて、お互いがプラスに作用しあう結果によってもたらされるし、保たれる。

そう考えるとワークライフバランスのとれたプログラマは、仕事でしっかりプログラムを書き社会に貢献し、プライベートでも好きなプログラムをがっつり書き自分や他人を楽しませる。そんな人なんじゃないかと思える。何よりもプログラミングのことが好き。だから仕事にしたし、仕事以外でもそれを普通に続けられる。このような境遇にたどり着くのは難しいかもしれないけど、目指してみたい。

Agile Japan 2010開催!

春です。Agile Japanの季節がやってまいりました。今年は4月9日と10日の2Days。

http://www.agilejapan.org/index.html

詳しくは上記サイトをチェックして欲しいのですが、今年のキーノートには野中郁次郎先生が登場します!今更説明するまでもなく『知識創造企業』や『失敗の本質』の著者であり、私もお会いできるのを楽しみにしています。
1年がたつの早いものです。私は今年も運営委員としてお手伝いさせていただくことになりました。私が今年お手伝いするのは、やっとむこと安井さんによる「カンバンゲーム」。ワークショップスタイルでカードゲームを楽しみながら、カンバン、特にプル方式のカンバンのメリットを体験していただこうというセッションです。
私もTodo/Doing/Doneカンバンはよく使いますが、プル方式カンバンは使ったことがありません。お手伝いという立場ながら、参加者の皆さんと一緒に楽しみ、プロ方式のエッセンスを習得してやろうと思っております。皆さんも是非参加ください。

Androidのポーティング動画

私の同僚がAndroidのポーティング風景をyoutubeで配信始めました。ARM9の組込みボード(friendlyARM)です。Web上ではあまり見かけない機種だそうなので、イロイロはまってて、その分面白いです。興味ある方は要チェック。

http://ameblo.jp/kanetugu-2001/entry-10480187690.html

小さい組織が新しいビジネスを推進する時に意識したいこと

たとえば今までとは違う顧客層へのアプローチをしたい場合に意識するといいんじゃないかなぁ、と感じていることです。新しいビジネスといっても、起業というよりは社内での新規ビジネス立ち上げのイメージですね。私の場合まだ成果を評価できる段階ではないので、自分のためのメモ。

オープンにする

狙いやモチベーション、計画などはオープンにする。プロジェクトのメンバー内はもちろん、社内全体にもオープンに。考えていることや困っていることも、社内SNSに書いてしまえばよい。全然関係ないと思う部署の人からヒントや引き合いや励ましをもらえることがある。

スピーディに(ただし、拙速は避ける)

素早く動く。分析中毒にならない。告知サイトなどはコンテンツがそろいきる前でも立ち上げる。営業が必要なら資料が中途半端でもどんどん予定を入れる。ただし、「なにがやりたいか」「何を売りにするのか」など、大事なことはしっかり検討する。

自分ひとりで考えすぎない

ひとりだと煮詰まってしまうので、みんなで考えるところはいっしょに考える。議論する。自分だけでなく、メンバーも信用する。

実力以上のことは出せない(だから、得意分野に集中する)

「あわよくば」的なことを前提に考えない。「○○なスキル持った人5人連れてくればできそう」とか考えない。今の実力を知り、得意分野に集中して、それをビジネスコンセプト・売り文句にする。この売り文句をメンバー間に浸透させ、さらにアイディアを膨らませる。

つてやコネを大事にする

コミュニティや友人、既存のお客様や関係先。とても大切です。ビジネスコンセプトの相談にのってもらったり、知恵を授かったり。

プレッシャーをかけてもらう

上司に期限や目標設定のプレッシャーをかけてもらう。プレッシャー駆動な仕事も時には必要。

運も実力のうち

運良くことが運んだ場合はそれを喜び、その状況を受けて計画をさらに見直し、次のステップは運以外の要素でもことが運ぶよう考える。

人材育成に投資する

不景気であってもなくても、中小企業に大きな投資は困難。でも、人に対する投資はできる。教育費はねん出しやすい(はず)。M&Aや引き抜きよりも、今のメンバーを育てることを検討してみる。勉強会に参加させる。コミュニティを支える。などなど。すぐに人は育たないので、人材育成上の課題は早いうちから検討しておく。

krbのLTで伝えきれなかったこと。

仮面ライダー勉強会でLTをしてきました。*1詳しくは角さんや角谷さんのblogを参照していただくことにして、僕はLTで伝えきれなかったことをまとめてみます(ドラならぬ音撃鳴っちゃったし)。

やっぱディケイド=プログラマ的メタファに対するディエンド=マネージャ的という軸を描いてみたかったんですよね。私が営業やマネジメントを担当している受託開発プロジェクト・案件は今ちょうど9つあって、これはちょうど当初ディケイドが廻ろうとしていた世界(=ディケイトまでの平成ライダーの数)と同じですし。
ディエンド(や鳴滝や大ショッカーの面々)が世界を移動するときに現れる「もやもや〜ん」って壁、あれが僕の印象に強く残っいて、LTでも多用してました。世界を移動して来るディエンドは、ちょうどいろんな現場に「ふらっと」現れる営業やマネージャみたいです。

現場にはそれぞれの世界があって、それぞれの開発者(ライダー)が頑張っています。僕はそこにあらわれて、追加の開発者ライダーを召喚し、時には助け、時には(結果的に)邪魔をしてしまうディエンドのようなものかもなぁ、と妄想する。テスト駆動開発アジャイルも、カードに封じられた力のごとし。つまり、自分が使うものではなく、誰かに使ってもらうためのアタックライドのようなもの。
別にこの状況をネガティブにはとらえていませんが、やはり現場で開発していた時の感覚とは違うなぁ、と感じていました。たとえるならバドミントンでスイートスポットをはずしているような。フレームショットばっかみたいな。そしたら先日案の定、社内のある人から「それは仕事から逃げてるんじゃない?」と指摘され「やっぱそうですよね」と感じていた状況前後でのkrbだったのです。
僕はまだマネージャとして甘い。プロになりきれていないと感じています。世界を移動し、他のライダーを召喚する権限は持っているけど、まだディエンドには変身できていないのかもしれない。もっと主体的に行動しそれぞれのプロジェクトで求められる役割をこなさないと、単なる傍観者になってしまう。ディエンドは確かに狂言回し的ですが傍観者ではなかったはずです。

現場で実際に苦労して成果出す主役はその世界のライダー(=開発者)であり、たまに顔出す営業やマネージャじゃない。そういう前提で考えてしまうと、「もやもや〜ん」の壁から現れては消えるディエンド的立ち回りに、正直なじめないこともありました。この気持ちはしばらくは続くかもしれない。
でも、世界のバランスを保ち、世界と世界を繋ぐという大事な役割を持っていることを忘れてはいけない。たとえば、数年前に開発が終了したシステムのお客様からの問い合わせを受け、それを現場の開発者に繋げるのは僕らディエンド的受託開発マネージャの大切な仕事です。どんな世界=お客様との関係も破壊させはしない!(ちょっと大げさですが)そんなことを考えさせられた勉強会でした。
最後になりましたが、スタッフの皆さん、講演者の皆さま、そして参加者の皆さま、本当にありがとうございました。楽しかったです。

*1:※LT資料は公開しません。あしからず。

仮面ライダーSE

VS(バーサス)、じゃなくてフォームチェンジするみたいにしなやかにやれたらいいと思うんだ。

プログラミングフォーム

変身アイテムはスマートフォンプログラミング言語を武器に闘う攻撃的フォーム。戦うたびに「言語」のスキルが向上し、しばしば複数の言語スキルを持ったライダーが生まれる。
通常は帰宅すると変身を解除するが、まれに変身状態のまま日常生活を送る者もあらわれる。彼らは時に「世界の変革者」となり、さらに「世界の破壊者」となる者も。

必殺技

スマートフォンとネットワークを駆使し、仲間のライダーから情報と知恵を授かることでパワーアップする。

マネジメントフォーム

変身アイテムは名刺カード。プログラミングフォームからフォームチェンジする。「肩書き」と呼ばれるシンボルによってパワーを変化させることができる防御的フォーム。プログラミグフォームに比べるとやや丸みを帯びた形態となる。
「ステークホルダ」と呼ばれる者たちとの調整が必要となるときに現れるプロジェクトの守護神との伝説があるが、フォームチェンジしただけでは、その能力を全て発揮することは難しい。このフォームにも訓練が必要なのだ。

必殺技
  • 「伝家の宝刀」

マネジメントフォームのまま、プログラミングフォームの技を発動させること。難局を乗り越えることができるが、自身やプロジェクトを弱らせる副作用もある。

最後に

すっかり明けてしまいましたが、2010年もよろしくお願いします。今年は軽やかに、しなやかにいきたいものです。