『ETの開発現場で求められている人材像と育成方法 〜アジャイルの活用事例〜』

来る7月29日、ETロボコンでおなじみアフレルさんと永和システムマネジメントで、プライベートセミナーを開催します。テーマは『組込み開発現場における人材育成』。
私は、アジャイルなプラクティスの導入事例についてお話する予定です。プライベートセミナーなので、話す人と聞く人の距離が近く、双方向なコミュニケーションで進められたらいいなと思っております。まだ空きがありますので、ご興味のある方は応募ください。

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【ご案内】プライベートセミナーを開催します(7/29)
『ETの開発現場で求められている人材像と育成方法 〜アジャイルの活用事例〜』
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大規模、複雑化するソフトウェア開発の現場において、従来型のプロジェクト運営だけでは、顧客の求める機能・品質・納期に応えるのが難しくなってきています。そこで、より俊敏でかつ柔軟なプロジェクト運営を実践するアジャイルが注目を集めています。
これまで日本では一部の開発チームで試験運用されているイメージが強かったアジャイルですが、様々なプロジェクトでの採用が急速に進み、実用段階に入ろうとしています。この流れはITだけにとどまらず、ET(組込みソフトウェア)開発の世界でも普及し始めています。

アジャイルの導入目的は多岐にわたり、属人性の排除、企画/メカ/エレキ/ソフト等の組織間の壁・対立や、現場のモチベーションアップ/コミュニケーションアップまで千差万別です。これらの課題を人材育成や、組織の活性化で解決しようとしています。

セミナーでは、現在、組込み開発で求められる人材像や人材育成企画の考え方や育成事例、または導入しやすいアジャイルラクティスをご紹介します。

『ETの開発現場で求められている人材像と育成方法 〜アジャイルの活用事例〜』
日 時:2010年7月29日(木) 13:50〜(13:30〜開場)
場 所:株式会社永和システムマネジメント 東京支社(上野、御徒町)
参加費:無料(事前申込制)

▼プログラム
1.ETの開発現場で求められている人材像と育成方法(仮)
2.ETの開発現場で役立つチーム運営手法と開発技術(仮)
3.ETの開発現場でのアジャイル(開発)の始め方
4.質疑応答、個別相談

▼詳細情報およびお申込みはコチラ↓
http://sec.tky.esm.co.jp/2010/06/29/private_seminar10/

制御の世界

私は業務システムの開発を中心にキャリアを積んできました。UNIXでのクラサバからVisualBasic、WebではJavaが多かったです。アーキテクチャや業務内容に多少の違いはあれ、いずれもソフトウェアだけで完結する世界でした。
この「業務の世界」にすっかり慣れ親しんだ自分にとって、組込み、特に制御の世界はまったくの未知数の分野です。ソフトウェアは制御にとって道具に過ぎず、「実際に動くモノの挙動」に心血を注ぐ世界だと雰囲気ではわかっているつもりですが、具体的にどのような仕事が必要で、何が課題になっているのか、もっと具体的に理解する必要があると感じています。

そんなとき、次の連載を読むことで随分理解が助けられました。

体験! MBD&MDDによる組み込みシステム開発(4)制御の世界のモデルベース開発とは?

※ちなみに記事中にも触れられているPID制御については、こちらを併せて読むとさらに面白いです。

制御モデルとはつまり業務知識そのもので、モデルベース開発をすることで、業務知識をそのまま動くソフトに変えることができる。これが組込み制御系の世界では実際に起きていることです。
業務系・ビジネス系ではなかなかこうはいかないことは肌身で分かっています。ただ、制御の世界から何かヒントが得られるかもしれません。普段とは違う刺激を求める業務系のソフト開発者の方にもお勧めできる内容です。ご一読ください。

MBD&MDDによる組込みシステム開発

弊社組込みグループでは、組込み開発をビジネスの柱にしようと日々奮闘中です。とはいえ、実績が少ない中で認知度を挙げ案件に結びつけるには、サイトを立ち上げたり名刺を頼ったりといった営業活動に加え、自分たちで学ぶことで技術力を身につけ、その技術がどのようにお客様の役に立つのかアピールする活動も必要です。
そのような問題意識を持ったメンバーが率先して始めた活動が、自分たちの知見を世に問う執筆であったり、自分たちの技術を競う「ETロボコン」への参加や運営協力です。実は他にもいろいろ活動中なのですが、今回はモデル駆動とその実践の場としてのロボコン活動について紹介させてください。

モデル駆動開発ロボコン活動で評価する

業務やWebなどICT系の開発では最近あまり話題に上がらなくなった感のあるモデル駆動開発ですが、品質を上流から作りこむことを重視する組込み開発において、その有効性は期待されています。私たちもその有効性を実際に体験・評価したいと思い、ETロボコンの活動を通じて実践をしています。

@IT MONOist-続・ソフトウェアのモデル駆動開発にチャレンジ!

詳しくは上記@ITモノイストの連載記事を読んでいただきたいのですが、ロボコンメンバーは、astah*でUMLモデルを書き、そこからコードを自動生成するツールを自作することでMDDを実現しています(ツールはダウンロードできます)。この仕組みは実際に私たちのロボコン活動で使われており、繰り返しチューニングが必要なロボットの実装において、「見通しがよい」「途中参加のメンバーでも理解しやすい」という好感触を得ております。
製品の量産開発でそのまま適用するには課題はあるでしょうが、基本的な考え方や手法を身につけるという意味では意義があると感じます。

「ICTの技術をETに融合する」第一歩として

私たちが組込み分野にチャレンジする際掲げているキーワードは「ICTとET技術の融合」です。「ICTの技術」が具体的に何で、どのような嬉しさがあるのかはこれからも突き詰めていきますが、MDDに代表されるモデル駆動の手法は、長らくオブジェクト指向に取り組んできた私たち永和システムマネジメントにとってのアドバンテージになると実感しております。
ロボコン地区予選まであと数カ月、当然コンテストに勝つという結果も求めていきますが、モデル駆動を実践評価し知見を蓄えるというゴールも追及していきます。

受託にも必要なイノベーション

以前私は、受託からはイノベーションは生まれないしその必要もない、と言っていました。

おっしゃるとおり、受託からイノベーションは生まれません。受託はイノベーションを目的として行うものではありませんし、イノベーションが必要条件でもありません。

今でも受託からイノベーションは生まれ難いとは思いますが、受託をするにしてもイノベーションが必要なことは最近わかってきました。ただし、ここでの「イノベーション」とは技術的革新という意味よりは組織の変革であり、仕事に対する取り組みや考え方を変えることです。

ビジネスとしては同じ受託だとしても、今までとは違う顧客セグメントや技術に取り組む、それだけのことでも組織にはイノベーションが必要となります。具体的には、営業のやり方、メンバーに対する意識付け、案件を受注する/しないの判断基準、教育予算の振り分け方までも変えていく必要があるのです。

この違いはやってみるまで実感できません。少なくとも私はそうでした。

実は、この春から私の所属するグループを中心に組込み系の開発ビジネスを始めました。私たちはもともとオブジェクト指向技術やアジャイル手法など、ICTを由来とする技術を強みにしてきましたが、これらの技術を組込み分野に持ち込み、よりよい開発をお手伝いすることをビジョンに掲げています。まずは組込みLinuxAndroid、自動車業界の次世代標準AUTOSARといった技術に対する知見を売りとした開発受託ビジネスからスタートします。詳しくは、永和システムマネジメント組込みグループのサイトをごらんください。組込みグループメンバーのブログや執筆などのコンテンツもありますよ。
http://et.esm.co.jp/site/index.html

ここ数カ月、ビジョンやコンセプト作り、Webサイトの立ち上げに営業訪問といった活動をメンバーと共に行ってきました。正直、戸惑いや不安も多かったのですが、メンバーや会社の支援もあり、なんとか離陸に向けて機首が少し上向いたかな、といった感触です。
しばらくは受託を中心に「お客様のイノベーション」をサポートしていきたい。そのような気持ちにあふれています。何とぞ、よろしくお願いします。

AgileJapan2010で得られたこと

つい先ほど、AgileJapan2010が無事終了しました。今年もたくさんの方に参加いただき、まずは一運営委員としてお礼申し上げます。ありがとうございました。
次に一参加者として感想を一言でいえば、「参加して良かった!」この一言につきます。詳しい内容については公式か他の参加者のレポートを待っていただくとして、私個人が受けた印象について書きます。

相互主観性とアクチュアリティ

まずは昨日の野中郁次郎先生のキーノート。
野中先生がずっと掲げられているテーマは知的創造性であり、大枠や触れられたエピソードについては著書『知識創造企業』などから言及されていました。しかしやはり、講演というライブな場で聞くそれは読書からの体験とは一味違いました。限られた時間で、自分の問題意識とすり合わせながら聴くからでしょうね。
私がまず印象にのこったのは「相互主観性」というキーワードです。知識を強みとする企業を作るのは、個人の信念を心理に向かって社会的に正当化していくダイナミックなプロセスであり、これらの思いを本音ベースでぶつけあい、高めあうためにリーダーシップが必要だということでした。
相互主観性とはいいかえれば自律性であり、私がチームビルディングをする上で大事にしている価値観でもありますし、アジャイルチームが目指すところでもあります。
また、実践と現場の重要性を説かれておりましたが、「現」といっても、分析的であり「モノ的」であるリアリティと、主客未分・直観的であり「コト的」である、アクチュアリティは違い、大事なのはアクチュアリティであること、という言葉も響きました。要は一緒に汗かくことが大事だよ、ということです。

チーム思考を拡張する限界

次に本日のAlanさんのキーノート。
「ポストアジャイル」というテーマで、今のアジャイルに欠けているのは構造とマネジメントである、という主張から、リーン思考についての展開でした。私にとって一番印象にのこったのは、リーンやカンバンや無駄とりの話ではなく、「チーム思考を拡張しても、(アジャイルは)企業レベルには適用できない」という、一言です。
私の得意分野はチームビルディングであり、プロジェクトチーム運営は自分の大きな成功体験です。しかし、チームではなく、もっと上位の組織運営が、どうもうまくいっていないとも感じていました。ふりかえってみると、私なりに考えた組つもりの組織運営なのですが、これは「チーム思考の拡張」であり、組織としてどうしたいか、どうあるべきか、というレベルで考えていなかったのかもしれません。
アクチュアリティを忘れず、かつ現場のチームとはまた違う観点から組織について考えてみるモチベーションがわきました。来月から来期の計画作りを開始するのですが、とても良いタイミングできっかけを得ることができたわけです。

その他
  • 県庁内でプロジェクトファシリテーションを実践されている佐賀県庁の東さんの発表が抜群に面白かったです。プレゼン能力が尋常じゃない。今度福井でも講演して欲しいくらいです。
  • 私がモデレータ担当だったカンバンゲームがとてもうまくいきました。参加いただいたみなさんのイキイキした顔がとてもよかったです。
  • 昨年(AgileJapan2009)の私の「カマスの話」を聞いて、現場で主体的に勉強会などの活動を始められた方と懇親会でお会いしました。このようなフィードバックはとてもうれしく、励みになります。
  • 野中先生はソフトウェア業界に今までノータッチだったそうですが、Scrumにおける野中論文の貢献度をアピールし、参加いただいたそうです。しまいにはノリノリになられたそうで、もしかすると平鍋さんは、ソフトウェア業界の歴史を変えるようなことをしたのかもしれないです。
  • 今回は二日間にわたりいろいろとお手伝いをできたせいか、いろんな人とお話することができました。今まで挨拶程度だった人としっかり話ができてとても良かったです。

暗黙知の重要性とか、他にも書くべきことはあるんですが、PCのバッテリが切れそうなのでこのあたりで。

プログラマのワークライフバランス

私の友人の外資系生保営業マンは、転職後わずか1、2年でトップ生保マンの証であるMDRTに選ばれるほどの優秀な奴だ。もちろん、土曜も日曜もなく営業しているし、何かあればお客様のところに駆けつけなくちゃなので、普通に考えるとしんどそうではあるけど、傍から見ていると、とても充実した仕事と生活をおくっているようにみえる。
彼は多趣味だが特に酒に対する造詣が深く、中小企業診断士と同じくらいの情熱で利き酒師の資格を取得したくらいだ。特筆したいのは、接待営業に使えそうだからといった打算で資格を取ったわけではないということ。本当に酒が好きだから取ったという。そしてもちろん、この資格は営業面にも役にたっているらしい。お酒で深まる仲というのは馬鹿に出来ない。
もちろん彼は、お酒の場だけでなく、普段から本気でお客様のライフプランについて考え、ベストな提案をしようと心がけている。そしてその心意気はお酒の場で見せる彼の生きざまによってブーストされお客様に伝わり、結果的に営業成績に結びついているのだと思う。

もう一人の友人は医療関係のソフトパッケージの営業マンだ。彼もとても優秀な営業で、お客様にとても好かれる。なぜ好かれるのか考えてみると、おそらく彼が「媚びないけども、尽くしてくれる」からだ。彼は自分の時間を使ってお客様の職場のPCを修理したり、ウイルス駆除まで行う。場合によってはプリンタをのせるラックを木材を買ってきて自作までする。お客様の病院の祭りの出店で焼き鳥を焼くことするする。でも彼は「PCや木工は自分の趣味だし楽しいから問題ない」と、平気な顔だ。
さらに、彼はこのような「業務外サービス」だけで仕事を取ろうとしているわけではない。彼は決して媚びない営業をする。泣きの営業はしない。知恵を絞ったシステム内容と価格設定により、売り手と買い手が納得した提案で勝負することに意義を感じているそうだ。

たまたま例が営業マンだったけど、私は彼ら二人とも仕事と趣味という意味でのワークライフバランスが取れた素敵な人生だと感じる。理想的なワークライフバランスとは、仕事でのいやなことをプライベートの楽しみで打ち消すことじゃなくて、お互いがプラスに作用しあう結果によってもたらされるし、保たれる。

そう考えるとワークライフバランスのとれたプログラマは、仕事でしっかりプログラムを書き社会に貢献し、プライベートでも好きなプログラムをがっつり書き自分や他人を楽しませる。そんな人なんじゃないかと思える。何よりもプログラミングのことが好き。だから仕事にしたし、仕事以外でもそれを普通に続けられる。このような境遇にたどり着くのは難しいかもしれないけど、目指してみたい。

Agile Japan 2010開催!

春です。Agile Japanの季節がやってまいりました。今年は4月9日と10日の2Days。

http://www.agilejapan.org/index.html

詳しくは上記サイトをチェックして欲しいのですが、今年のキーノートには野中郁次郎先生が登場します!今更説明するまでもなく『知識創造企業』や『失敗の本質』の著者であり、私もお会いできるのを楽しみにしています。
1年がたつの早いものです。私は今年も運営委員としてお手伝いさせていただくことになりました。私が今年お手伝いするのは、やっとむこと安井さんによる「カンバンゲーム」。ワークショップスタイルでカードゲームを楽しみながら、カンバン、特にプル方式のカンバンのメリットを体験していただこうというセッションです。
私もTodo/Doing/Doneカンバンはよく使いますが、プル方式カンバンは使ったことがありません。お手伝いという立場ながら、参加者の皆さんと一緒に楽しみ、プロ方式のエッセンスを習得してやろうと思っております。皆さんも是非参加ください。